琴、瑟相和す【其の四】

こうした古い雅楽器の名前を使い、「きん瑟相しつあいわす」という言葉があります。夫婦仲がとても良いことをあらわしています。

その出典は、詩経、小雅の常棣に、

妻子 好合し 琴瑟きんしつするが如し
兄弟 既にい和楽 且つたのしむとあります。

つまり妻子、兄弟が和して楽しむのであり、一家の和合を歌いあげたものですが、いまではもっぱら夫婦和合(仲の良いこと)の意味で使われています。

最近ではあまり言われなくなりましたが、結婚式で「これからのお二人は、才子佳人にふさわしく琴瑟相和して、素晴らしい家庭を築いてくれるものと確信しております」 などと使われています。

この楽器。きん神農しんのう氏が作り、五絃に始まり七絃になったと言います。瑟は伏義ふくぎ氏が作り、五弦に始まり大瑟五〇絃 中瑟二十五絃 小瑟五絃になったと言います。
いずれにしても、中国・黄河こうが時代の所産であるようです。

琴瑟について、ある姉妹がこの楽器を欲しがったので、困った父親が二つに分けて琴と瑟にして、姉妹に与えた。との逸話もあるようです。

コトの種類ですが、昔は

和琴わごんまたは倭琴やまとごと
琴瑟
琵琶(びわのこと)
そう
新羅しらぎ
百済くだら琴 

等がありましたが、琵琶は単に琵琶となり、新羅琴、百済琴は亡び、コトといえば筝と和琴だけになってしまいました。

なお、琴瑟相和すの反対は琴瑟相整わずです。念のため。