話はまたまた横道にそれますが、皆さんは「でんでん太鼓に笙の笛」という言葉を知っていますね。
これは、江戸子守唄の一節です。その歌詞は、
ねんねんころりよ おころりよ
ぼうやはよい子だ ねんねしな
ぼうやのお守りは どこへ行った
あの山こえて 里へ行った
里のみやげに 何もろうた
でんでん太鼓に 笙の笛
です。
この曲は日本の伝統的な子守唄で、江戸時代 の文化文政時代の頃から記録があり、江戸から 始まって各地に伝えられて、日本の子守唄のルーツになったといわれています。
傍線部分は、明らかに雅楽器です。
でんでん太鼓は、奚婁鼓が玩具化したものです。信西古楽図に描かれている奚婁鼓そのものです。
そして、笙の笛とあります。これが今まで問題になって来ました。笙という楽器は大変に高価なものです。その高価な楽器を子供の土産にするのはおかしい、というのです。
当然のことだと思います。
では、笙の笛とはどのようなものだったのでしょうか。私は俳簫のことだと思います。
小さい頃、竹の筒を何本か並べてその口の部分をハーモニカのように吹いた玩具があったように記憶しています。あれが笙の笛だったように思います。
正倉院の復元楽器を見てもまさにその通りの姿形をしています。しかしながら、驚きは遥か昔、平安時代に使われなくなった雅楽器が、江戸時代に子供の玩具として復活されようとは普通、考えられません。日本の文化の素晴らしさを垣間見る思いです。