雅楽から生まれた言葉③【其の二十五】

こつ

コツー物事をする場合のかんどころ。要領をいいます。

物事の要点を把握し、核心を外さないように扱うさま。要領を得た様子のこと。(実用日本語表現辞典)

漢字では「骨」と書いて、物事の本質を掴つかむ様を表す。というのが一般に使われています。

しかし、雅楽には違った説があります。それは、コツとは「乞」と書いて、笙の竹の名前から来ているというものです。

笙には十七本の竹があり、それぞれに「せんじゅうおついちはちごんしちぎょうじょうぼうこつもう」とうい名がついています。

この中で「乞」の竹は吹き口の向い側にあり、しかもこの音を出すには左手の薬指を使います。

一番動き難い指であり、しかも、孔の開閉だけでなく擦り放すといった技術を使います。

良い演奏をするには、この乞を掴むことが大切なことになります。

唱歌

歌を歌うこと。

また、明治初期から第二次世界大戦終了時まで学校教育用につくられた歌のことです。

一般では文部省唱歌といっていました。

唱歌の歴史は、雅楽から始まり、能楽、長唄でも用いられるようになりました。

そして、明治時代になり、声楽が輸入されたとき、日本では歌を歌う習慣がなく、その言葉が無かったので、その呼称を思案したとき器楽を用いないものであるから昔から使われている「唱歌」にしようとなった、といわれています。

雅楽では、笙、篳篥、笛はそれぞれの旋律を歌って暗譜しますが、それを唱歌( しょうか、しょうが、古くはそうか)といいます。

なお、昔は管だけではなく、琵琶などにも唱歌があったといいます。

なお、雅楽における譜面( 譜本) とは、この唱歌のことを指します。

よく使われている紙に誌された譜本は、ただ手付けを誌しただけのものといえるでしょう。

洋楽の譜面に誌されている、音の強弱、リズムなど演奏に必要なデータはすべてこの唱歌に含まれています。

唱歌を完全に歌い、暗譜することが、すばらしい演奏をする必修条件だと言えるでしょう。