「大確幸」
2015年の国際サミットで採択され、近年日本でも取り上げられている「SDGs(=持続可能な開発目標)」。
17個の具体的な目標を2030年までに達成し、国際全体で社会問題を解決していこうとする動きだ。
その中でも「ジェンダー平等」は、去年の流行語大賞にノミネートされ、日本でも注目を集めている。
その背景には、日本オリンピック委員会の森前会長の女性差別とも取るべき発言が世間を騒がした出来事があり、流行語大賞の選考理由に影響したそうだ。
このように流行語とは、その時代の人の興味や関心が反映され、強い感化的な意味を持ち、高頻度に使用される言葉である。
その世相を表す流行語を知ることで、現代社会を理解することができる。
私が韓国に留学していた時、トレンドの一つに「소확행 」と言う言葉があった。
これは「소 소 하 지 만 확 실 한 행 복(僅かだが確実な幸せ)」を省略した言葉で、元々は日本の小説家である村上春樹の小説に出てきた「小確幸」を韓国語の漢字語にそのまま置き換えたものだ。
それがなぜ韓国で流行したのだろうか?
韓国という国は、第二次世界大戦や朝鮮戦争を終え、1960年頃から漢江の奇跡と呼ばれる急速的な経済成長を遂げた。
1996年にはOECD(経済協力開発機構)に加入し、1997年にはIMF経済危機を経験しながらも、今ではGDPの推移も世界15位圏内に入っており、相対的に先進国と見做されている。
しかし、その急激な経済成長の副作用により、深刻な学歴社会、熾烈な競争社会など、日本と同じような多くの社会的問題を抱える事となった。
また韓国では、首都ソウルの有名大学を卒業し、大企業に就職してこそ人生の成功、と考えられてきた。それこそが幸せなのだと。
しかし、それはごく一握りの人間しか得ることができない幸せである。
このような社会的背景から、韓国では「小確幸」と言う言葉がトレンドに上がったのだろう。
社会的な成功を夢見て、日々努力をしても報われない環境から抜け出し、人生の幸せを身近なところから探していく。
このような考え方は、根本的な部分は違うとしても、天理教の教えにも通ずるものがある。
日々、何も気にすることなく見過ごしていた「小確幸」を見つける眼識を育てることは、人生を楽しむ一つの道であろう。
この世は親神様の身体であって、世界は隅々まで隔てなく、親神様の御守護を頂戴している。
親神様からお借りしているこの身体も、親神様の御守護なくては呼吸をすることも、食べることもできなくなるのである。
その大恩を感じ取れるよう"大きくて確かな幸せ"を忘れぬよう、日々心を澄ます努力をしていきたいものである。
3年半の留学生活は、本当に大変な時期も多くあったが、大学院や住んでいた下宿先の人たちに恵まれ、海外部の方々や家族に支えられた。
そしてなにより親神様・教祖の御守護と、ご先祖様がこの道をお通り下されたおかげで、大きな身上・事情なく日々を過ごせたのだと心から思う。(永尾和繁)