アメリカでは、麻酔をして出産する無痛分娩が主流である。
妻は、日本のように自然分娩を希望する旨を事前に伝えていたが、ドクターからは何度も「Are you sure?(本当にいいの?)」と尋ねられ、分娩室でも再度確認されるほど。
そんなドクターの心配をよそに、妻は激痛を耐え抜いて、無事に出産を終えることができた。
母子ともに健康な安産である。
アメリカでは、立ち会った夫がへその緒を切らせてもらえるので、私はその感動を二度味わうことができた。
産後の入院期間は、日本では大体一週間くらいというイメージだが、アメリカでは通常、産後48時間を目安に退院する。
帝王切開の場合でも手術後3、4日で退院するそうなので、日本の感覚では信じられない。
また、日本と違い、入院中は母子同室で過ごし、基本的に子供の世話は全て親に委ねられているので、病室の母親は結構忙しい。
授乳が終わって子供が寝たと思ったら、ナースが入ってきて母体や子供の検査をしたり、小児科のドクターが回診にきたり、授乳カウンセラーによる授乳指導があったりと次から次とやることがある。
そんな入院生活で妻の唯一の楽しみは、やはり食事である。
アメリカの病院は、ハンバーガーやチキンウィングなどアメリカらしいものから、メキシカンやチャイニーズ、コリアンなども用意されており、電話でオーダーした料理が病室に運ばれてくる。
出産と睡眠不足で疲れ切った妻も、「今日は何を食べようかなあ♪」と食事の時だけはイキイキ。
母はたくましいものである。
最後にお金の話。
アメリカの出産費用は、百、二百万円は確実だと聞いたことがあり、私たちもかなり不安だったが、なんと二回とも病院での支払いはゼロ!
私達はアメリカの医療保険には加入していなかったが、カリフォルニア州が提供する低所得者向けの福祉サービスから限定的な保険適用を受けており、幸いなことに、妊娠出産は保険適用項目の一つだったのである。
とはいえ、妻を連れて退院する時、後ろから請求書を持った病院スタッフが追いかけてこないか、内心ドキドキしていた。
幸い、その後も請求書は送付されてきていない。
子供を授かることは当たり前ではない。私達はそれを異国の地で経験する中で、親神様の十全のご守護と教祖が下さるをびや許しのありがたさをより身近に感じることができた。
また、出産に至るまでに、どれだけ多くの方々に支えられているかにも気づかせてもらった。
アメリカで生まれた子供は、親の国籍に関わらず、アメリカ国籍が与えられる。アメリカ人でもある内の子供達が、将来何かしらの形でアメリカの方々のために恩返しをしてくれたらなあと漠然と願っている。(森本 仁)