ロサンゼルスにあるアメリカ伝道庁で、約5年勤めさせていただく間に、二人の子宝に恵まれた。
私たち夫婦は結婚直後に渡米したので、初めての妊娠出産をアメリカで迎えるという貴重な経験をさせていただいた。
第三子は、帰国後日本で出産したので、逆にアメリカとの違いに戸惑った私たち。
今回は、私が妻と共に経験したアメリカの妊娠出産事情をご紹介したい。
アメリカの妊婦検診は、町の産婦人科クリニックで行うのが一般的である。
日本のように総合病院の産婦人科で診察してもらったり、アットホームな助産院が人気な訳でもない。
私は夫、兼通訳として、毎回検診に同席した。
不安そうな妻の手前、私がしっかりしないといけない。
医療用語などの専門用語は、聞き慣れないものばかりなので、事前に色々と調べてリストにして持参する。
時々分からない言葉があっても、それらしくその場を取り繕い、妻にもそれらしく説明する。
しかし、英語があまり分からないはずの妻だが、感が鋭いのか、意外に細かいところを突いてくるので、こちらも診察中ボーッとはしていられない。
診察内容に大きな違いはないが、超音波検査(エコー)が日本では検診の度にあるのに、アメリカでは数回だけだったり、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる出生前診断が当たり前だったりという違いがある。
また、日本は食育文化が浸透しているせいか、妊婦も食事に気を使うことが一般的だが、アメリカではビタミン剤などのサプリメントを積極的に勧められる。
クリニックからも無料でどんどん配られたが、サプリを飲むこと自体に慣れていない日本人には、いまいちその大切さがピンとこない。妻もよくドクターから飲み忘れを注意されていた。
伝道庁の御用で忙しく立ち回っていた妻だが、「をびやの御供」にしっかり守っていただき、第一子、第二子とも概ね順調な胎児の生育と妊娠経過をご守護いただいた。
そして、いよいよ臨月に入り、予定日が近づいてくる。
アメリカでは、クリニックのドクターは、総合病院と提携しているので、分娩や入院だけは病院で行うことになる。設備やスタッフ面での安心感はあるが、勝手の分からない病院に行かなければならないのは、なんとも不安である。
そして始まった前駆陣痛(臨月に起こることが多い腹痛や腰痛のこと)は、どちらの子も夜遅く。
陣痛の間隔が短くなっていくのを確認した上で、妻を車に乗せ、暗い街中を走って病院へ向かう。
幸いそのまま分娩室に通され、ドクターにも連絡が入る。アメリカの分娩室は広く、ベッドや色々な医療機器以外にも、出産に立ち合う家族のためにソファが設置されている。
第二子の時は、陣痛が小康状態になった時があったので、私はその間ソファで仮眠を取ることができた。なんともありがたい病院側の配慮である。(森本 仁)