今回は留学時代ではなく、前職での海外出張で見た中国の製造現場の話を記そうと思います。
以前私はあるメーカーで商品の企画開発の仕事をしていました。
詳細を記すと、雑貨や生活用品を扱う小売店へ商品の企画提案を行い、そのアイデアをもとに生産工場と商品開発を行うことが私の業務内容でした。
そして生産工場の多くは中国にあり、私も2度出張で訪中していました。
ちなみに皆様の手元に“中国製”の製品はどれほどあるでしょうか。スマートフォン、文具、キッチン用品など数多くの製品が中国で生産され、日本は多くの製品を輸入しています。
それは世界的にも同じで、低賃金なこと、海に面していることや、アジアやヨーロッパへ陸で繋がっているため多くの国と貿易ができることから、「世界の工場」と呼ばれています。
(近年は中国も経済発展し、“低賃金”と言えなくなっていることや、政治的な理由で生産拠点を変更する企業が増えていると聞きます。)
では皆様は中国製と聞いてどんな印象をお持ちでしょうか。なんとなく「品質が良くない」という印象をお持ちでないでしょうか。
実際に中国の製造現場を見ていた私も同様の印象があります。
ではなぜ「品質が良くない」印象があるのか。私の考えでは、「日本人の求める品質レベルが高い」からだと思います。
日本人は職人気質な仕事観からか高品質な製品ばかりで、それを享受してきた日本人の持つ品質の要求レベルは非常に高いです。
では中国の製造現場はというと、低賃金で大量生産が得意なことから、生産数や低価格という強みを口にする現場が多く、出荷数を減らし、かつ工数がかかる検品を軽んじる現場も少なくありませんでした。
事実、日本以外の海外向けでは品質に関して大きな問題がないことから、マーケットの仲買人に「日本市場は品質に厳しく発注数も少ないから取引したくない」と言われたこともあります。
(品質を追求するなら厳しい検品や手間が必要になり、発注数が少ないと工賃との割が合わないので多く発注しろ。という意味ですが、日本では品質ありきなので、この手の仲買人とはうまくいきません。)
とは言え、中国製は日本製よりも安価で、日本市場は中国に依存しているのも現実です。
しかし先にも触れたように、あらゆる国際情勢から生産拠点を中国から変更したいと考えている企業は少なくありません。
しかしそれは簡単ではなく、商品の原価や工賃、貿易コストや働く人々の価値観や政治の面など、多くの課題があります。
次の「世界の工場」はどこになるのか、身の回りに中国製以外にどの国の製品が増えるのか、個人的に注目しています。(山本 伸裕)