雅楽の調子【其の六】

鎌倉時代に書かれた楽書がくしょ(雅楽の書物)に、「管絃音義」という書物があります。これは、天にある星、そして方位、時間、四季、色などを雅楽に当てはめ(コラボ)たものです。

順番に説明しましょう。

中央に位置するのが、壱越調いちこつちょうです。壱越調は洋楽のに近い音を基調に音階がつくられています。季節は土用。色は黄色、五行は土、品は陶。

北に位置するのが、盤渉調ばんしきちょうです。盤渉調は洋楽のに近い音です。季節は冬。色は黒(玄武)。干支では子。五行はすい。品では石。

東に位置するのが、雙調そうじょうです。雙調はの音を基調にしています。季節は春。色は青(青龍)。干支では卯。五行はもく。品は竹。

南に位置するのが、黄鐘調おうしきちょうです。黄鐘調はの音を基調にしています。季節は夏。色は赤(朱雀)。干支ではうま。五行は。品は磁。

西に位置するのが、平調ひょうじょうです。平調はの音を基調にしています。季節は秋。色は白(白虎)。干支では酉。五行は金。品は鉄。と比定されています。

昔は、春には春の曲といったように季節の調子(曲)しか演奏しなかったとき(時代)もあったようです。秋には平調、春には雙調といったように、決めて演奏したようです。

でも、それだと、吹きたい曲が、春の調子の曲だと秋に吹けないという事になってしまいます。そこで、渡し物という技法ができたともいわれています。 渡し物とは、移調のことです。

例えば、平調の越殿楽の曲を雙調や盤渉調に変調して演奏することです。譜本を見ていただくと分かりますが、壱越調にある曲名が、雙調などにも同じ曲名で載っています。