
「おたすけをしましょう」と言われると、なんだか壮大なことに取り組む感じがして、「私なんかがとてもできません」と、気後れする人は少なくない。
「あなたにしかできないおたすけがあります」と言われても、「それが分からないから困っている」と感じる人も多い。
かく言う私も、お道を通りだした最初の頃はずっとそう思っていた。
少し前、教友から「聴く勉強会」に誘われた。
会の趣旨は『おたすけはまず聴くことから』。
現在は月に2、3回、勉強会に参加している。
そこにAさんという女性がいた。
真面目な性格で、それが裏目に出てなのか、なかなか上手く話を聴けず、苦労しているように見えた。
回を重ねると気心が知れてくる。
どうやら話を聴く以上に、モヤモヤした自身の気持ちを整理することが苦手なのが分かってきた。
そこで、少しだけ助言したことがある。
『モヤモヤの原因はほこり心』との持論を持つ私は、ほこり心を見つける方法をお伝えした。
モヤモヤを感じたとき、自分自身に「なんで私はモヤモヤしているの?」と問いかけ、善悪の判断はしないという、簡潔明瞭な方法である。
そして、出てきた答えをさらに「なんで?」と深めてゆく。
4~5回も繰り返すと、モヤモヤの原因がはっきりしてくる。
はっきりすると、どう対処するかが分かってくる、というもの。
真面目なAさんは、言われた通りに実行したので効果テキメン。
晴れ晴れとした顔で、「モヤモヤの原因が分かり、心の奥底に隠していたパンドラの箱も、自分で開けることができました」と喜んでおられた。
それどころか、自分の心の声を深く掘れるようになった結果、人の話も聴けるように激変した。
実はAさん、傾聴のボランティアをされているのだが、同僚からも「なぜそこまで上手に聴けるの?」と言われるようになられた。
さらに、悩み相談の方が過去の自分と似ていたので、気づけば自分のたすかった話を真剣に話していた。
すると再訪時には、涙ながらに心が救われたと言われ、Aさんは自分のたすかり以上の感激を覚えられたのである。
戦争による弾圧をうける前には、十全の守護と八つのほこり(ほこりの説き分けは澤井勇一著『おふでさきを読む』233ページ参照)を初席の前に試験される初試験というのがあった。
この時代の信仰者の多くは、ほこりの教えに照らし合わせて心が救われた話を持っていた。
そのおかげか、おはなしによるおたすけが盛んであったとも聞く。
Aさんがされたのは、おはなしによるおたすけそのもの。
自分の心と向き合うことで、心が救われる。
そして、過去の自分と同じような人と出会ったら、真剣にたすかった話をする。
結果、目の前の人が救われ、それによって自分もまた救われる。
まさに教祖が教えてくださった通りのおたすけの姿。
難しいことをしなくとも、自分のほこり心と真摯に向き合い、払うことで、自分もたすかり、人もたすかる話の台となる。
教え通りの素直な実行が、そのままおたすけに直結すると、Aさんを通して教えていただきました。(西岡寛麿)