前川きよしげ
法律相談



  離婚E


4〜8月号に引き続いて、次の事例に基づいて、調停離婚、裁判離婚についてご説明します。

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Q.A夫さんと、B子さんは離婚することになりましたが、2人の間には、ひとり息子のC君(5歳)がいて、A夫さん、B子さんともにC君を引き取って、自分の手元で育てたいと譲りません。
 C君の親権はどうなりますか?

A.A夫さんが引き取った場合と、B子さんが引き取った場合では、どちらがC君にとって幸せかを基準にして、裁判所が決定します。

解説
1【親権】
 父母が未成年の子ども(満20歳未満の子。民法4条)を養育する立場から発生する権利を総称して「親権」と言います。
 親権を有する者、すなわち親権者は未成年の子どもを監護し、教育する権利を有し、義務を負っています(民法820条)。具体的には、子どもの暮らす場所を決めたり(民法821条)、職業を営むことについて許可を与える権限も親権です(民法823条)。
 親権は、未成年の子どもに対して父母が共同して行使しますが(民法818条3項)、父母が協議離婚するに当たっては、そのどちらか一方を親権者として離婚届に記載しなければならず、親権者の記載のない離婚届は受理されません(民法819条1項、765条1項)。したがって、夫婦間で、離婚することについては合意が成立していても、子どもの親権について(その付随条件として養育料についても)合意が整わない場合は、結局は協議離婚には至らず、調停、裁判と進みますが、それでも話し合いが成立しないときは、裁判所が親権者を決定します(民法819条2項)。

2【親権者決定の基準】
 それでは、裁判所はどのような基準で親権者を決定するのでしょうか。
 この点、民法には明文の規定はありません。
 しかし、民法819条6項は、親権者変更の要件について「子の利益のため必要があるとき」と定めていますので、離婚時の親権者の決定ついても、同様に、抽象的には「子の利益」を基準に判断すると解されています。

 そして、具体的には、
@ 乳幼児期における母性優先(乳幼児の生育には母親が不可欠との見解。例えば、東京高裁判決昭和56年4月27日)、
A 継続性の原則(子どもを現に養育している者から引き離すことは、子どもに対して心理的な負担を与えるとの見解。例えば、東京高裁判決昭和56年2月26日)、
B 子どもの意思(15歳以上の子どもについては、親権者の指定に先立って、裁判所は子どもの意見を聞かなければなりません。人事訴訟法32条4項、家事審判規則54条、70条、72条)、
 その他の判断要素が提唱されており、これらの事情を子どもの年齢や、状況等に応じて検証するとともに、父母側の事情として、養育の意欲と能力や、健康状態、経済的・家庭的環境、居住・教育環境、これまでの養育状況、愛情の程度、実家の状況、親族や友人の援助の可能性などが総合的に勘案された上、「子の利益」を基準に最終判断されます。