音取と調子【其の五】

さて、奏楽の話に入って行きましょう。

祭典で楽人が所定の位置に着席いたします。ほとんどの教会では中段でしょう。座る序列は、鞨鼓かっこ・太鼓・鉦鼓しょうこ・琵琶・筝・笙・篳篥・龍笛の順です。

そして、まず音取ねとりが奏されます。この音取というのは、洋楽で言うチューニングですが、雅楽では、只単に単音を出して音合わせをするのではなく、短い曲を演奏します。

これは、これから演奏する調子ちょうし を人々に知らせると共に、その音形を感じてもらう役割も持っています。そして、宮音きゅうおん(基調となる音)と徴音ちおん(和音になる音)を中心に構成されています。

音取は、まず笙の音出しから始まります。笙の音に合わせて篳篥が吹き出します。その篳篥の音に合わせて龍笛が吹き出すと鞨鼓が打ち始め、笛と鞨鼓が終わる寸前に琵琶の一絃が入り、以降琵琶と筝の演奏があり、最後に筝が宮音を弾いて音取が終わります。

音取は、各楽器の兼ね合いの中で演奏されますので、とても趣おもむきの深いものです。じっくりと聞いてみてください。それに、演奏団体の技量もよく分かるものです。素晴らしい演奏だと、音取だけでも感動します。

さて、調子ですが、雅楽には現在六つの調子があります。壱越調いちこつちょう平調ひょうじょう雙調そうじょう黄鐘調おうしきちょう盤渉調ばんしきちょう太食調たいしきちょうちょうの六つです。

分かり易く理解をするとなると、この調子というのは、洋楽(西洋音楽)で言うと、ハ長調・へ長調・イ短調等々のようなものだと思って下さい。

昔はもっと多かったのです(枝調子えだちょうしというものがありました)が、近年この六つの調子に集約されました。

さらに、昔の人は何事も理論で固めることも好きなようでした。雅楽もその範疇はんちゅうに入っていたようです。

次回では、そのことに触れてみたいと思います。