子どもが他人に損害を与えた場合の親の責任(その3):前川きよしげの法律相談

問1

私の長男甲は小学校1年生です。
同級生のA君、B君、C君らにいじめていたようで、階段の上から背中を押されて、甲は転倒して、ケガをしてしまいました。

A君らの親に責任を取ってもらわなければならないことは当然ですが、担任の教師Dさんはいじめに気が付いていた様子ですし、DさんがA君らを厳しく叱っていてくれたなら、甲はケガをしなくて済んだと思います。
D教師は責任を負わないのでしょうか?

はい、Dも賠償責任を負います。
Dのように小学校の教師や、託児所、幼稚園の保母、精神病院の医師、子どものボランティア活動の指導者など監督義務者に代わって、責任無能力者を監督する責任を負う者もまた賠償責任を負います。

問2

私は天理教E分教会の会長です。
「こどもおぢばがえり」の引率をしていた時、F君がG君を殴って、ケガをさせてしまいました。
私もまたG君の治療費その他の損害を賠償する義務を負っていますか?

はい、問1と同様に代理監督者として賠償責任を負います。

解説

1(代理監督者)
前回までに説明した通り、行為者に不法行為に関する判断能力を欠いている場合(責任能力を有しない場合)には、当該責任無能力者(未成年者、精神障害者)に代わって、監督義務者が賠償しなければなりません(民法714条1項本文)。
と同時に、監督義務者に代わって、責任無能力者を監督する者も賠償責任を負います(民法714条2項)。

監督義務者に代わって、責任無能力者を監督する者を「代理監督者」と言います。
ここで言う代理監督者が、小学校や託児所、幼稚園、病院などの施設、事業主体を意味するのか、教師や、職員などの個人を意味するのか、学説上の争いがありますが、最近の学説の多くは個人ではなく、施設、事業主体を意味すると解しています。

そうすると、説例2の場合は、会長個人ではなく、E分教会が責任を負うことになります。
なお、「こどもおぢばがえり」の引率で賠償義務を負うことは、各教会長にとって酷とも思われますが、子ども会のなどのボランティア活動の指導者について、代理監督者と認定した裁判例があります(福岡地裁小倉支部昭和59年2月23日判例時報1120号P.87)ので、「こどもおぢばがえり」の引率者についても代理監督者に認定されると思われます。
万一を考えたなら、損害保険(レクレーション保険)に加入するのも1つの方法かも知れません。

問3

今年、長男、Hが高校へ入学しましたが、他の生徒と一緒に
クラスメートの乙君をいじめて、ケガをさせてしまいました。

Hは15歳です。やはり、私はHの親権者として、乙君の治療費その他を賠償する責任を負いますか?

例えばHが日頃から粗暴で、他人にケガをさせるおそれがあると知りながら、あなたが親としての指導や監督を怠り、その結果として、Hが乙君に暴行を加えたような場合には、あなたにも損害賠償が命じられます。

解説

2(最高裁判決-監督義務違反と不法行為との間に因果関係がある場合)
前回に説明した通り、判例は概ね12歳前後で責任能力を認めています。説例のHは15歳ですから、責任無能力者であると認定するには無理があり、父母に対して監督義務者としての賠償を命じることは困難です。

ところが、最高裁昭和49年3月22日判決は、15歳の少年が流行のズボンが欲しくて、新聞配達の少年を殺害し、その集金した新聞代金を強奪したケースにおいて「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する」と述べています。

理屈の問題はさておき、15歳だから責任無能力者ではない、したがって、未成年者本人が損害賠償すべきだとしても、実際に資力はなく、被害者は救済されません。それ故に、民法714条1項に基づく監督義務者として責任は負わなくても、不法行為責任の一般法である民法709条による責任を肯定して、これによって被害者救済を図ろうとした判決です。

その後、暴走族に入った17歳の高校生に関しても、上記最高裁の判決に従い、親に賠償を命じた判決もあります(東京地裁平成4年7月20日、判例時報1436号P.60)。

 

→前川きよしげの法律相談TOPに戻る