非嫡出子の法定相続分(その2):前川きよしげの法律相談

非嫡出子の法定相続分差別(現行法は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めていること)に関して、今年9月、最高裁判所は法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判決したことを紹介しました。

その上で、子どもは親を選んで生まれてきていないのに、自らの生まれについて何ら責任のない非嫡出子を差別することは許されないと解説しました。

ところが、これに対して、日頃から大変親しくご指導頂いている、ある分教会の会長、Aさんから「私は最高裁に異議がある」とご連絡を頂きました。
Aさんの疑問は次の通りです。

非嫡出子の相続分を、嫡出子と同じにするなら、非嫡出子にも年老いた親を扶養する義務を負わせるべきではないですか?

この点、Aさんに誤解があります。

民法は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めていますので(877条1項)、嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと、子は親を介護する義務を負っています。

嫡出子が親の生活のために一生懸命働いているのに、非嫡出子は親から小使いをもらって遊んでいる。
それでも、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じですか?

Aさんの言う通り、嫡出子は親孝行で、非嫡出子は親不孝とは限りませんが、嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと、例えば子が親の経営する商店で一生懸命働いて、その結果、親の財産が増えたならば、その分はその子の相続分に上乗せされます。

立教175年7月号と8月号で解説した「寄与分」です。親の看護に尽くした場合や、親の事業に金銭的な援助をした場合も同様です。

逆に、嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと、親の生前に特別な利益を得ていた場合は、その分だけ相続分から差し引かれます。「特別受益」という制度です。
したがって、Aさんの疑問はいずれも公平に解決できるはずです。

ところで、私が弁護士に成り立ての頃に担当した遺産分割事件ですが、Bは妻C子と、長男Dを残して出征しました。終戦後、帰国できたものの仕事が無く、奈良県が募集していたあやめ池北側の開拓に従事しました。C子は農作業が嫌で同行しませんでした。

その後、BはE子と知り合い、二人は掘っ建て小屋に暮らしながら開拓を続け、二人の間にはFも生まれました。Bの開拓した農地周辺はやがて宅地開発が進み、Bも農地の一部を売却したところ、数億円なりました。Bが脳梗塞で倒れて、寝たきりになった後は、E子はBを介護する傍ら野菜を育て、その野菜をBが土地の売却代金を預金した銀行の駐車場の一角を借りて販売し、生活を支えました。

しかし、Bの法律上の妻はC子であり、E子ではありません。したがって、Bが死亡した際、Bの遺産はBと何十年も顔を合わせていないC子が法定相続分通り2分の1を相続しました。Fは非嫡出子ですから、Dが3分の1、Fが6分の1を相続しました。

Bの財産の全てはBとE子が二人で築いたものでしたが、E子は一切相続できません。E子は半世紀以上Bと暮らし、Bと一緒に財産を築き、Bの晩年を介護しましたが、法律上は妻ではないからです。

私は、この事件でC子とDの代理人を務めました。若い頃は分かりませんでしたが、今振り返ると、相続における「公平」とは何か、考えさせられます。

→前川きよしげの法律相談TOPに戻る