「公序良俗」に違反する契約(その3):前川きよしげの法律相談

Aは交通事故に遭って働けなくなり、おカネに困って、当座の治療費や生活費として100万円を貸して欲しいと頼んできました。

そこで、私はAの足下を見て、「月1割の利息を支払うなら、貸してやる」と答えています。ただ、テレビの時代劇で出てくる高利貸しのようで、犯罪にならないか、また契約は有効で、貸した100万円を返してもらえるのか、心配です。

月1割の金利を取ったら、出資法違反となり、5年以下懲役等刑罰を科せられてしまいます。

また、100万円を貸した契約は「暴利行為」に該当し、民法90条で無効になり、貸した100万円も戻ってきません。困っている人の足下を見て、大儲けしようとしても、法律は許しません。

解説

1(公序良俗違反の類型)
民法第90条(公序良俗)に違反し、無効とされる類型には、昨年11月号で説明した、
(1) 性道徳や家族的秩序に反する行為、犯罪に関わる行為など基本的な倫理観に 反する行為や、昨年12月号で説明した、
(2) 著しく自由を制限し、個人の尊厳を損なう行為に加えて、
(3) 暴利行為、
(4) 著しく不公正な取引、契約内容
(5) 憲法の趣旨、精神に違反すること
などを挙げることができます。

2(暴利行為)
このうち、「暴利行為」とは他人の困窮や、情報、知識、経験不足に乗じて、不当に大きな経済的利益を得ることを言います。法は「経済的強者」が「弱者」から搾取することを許さないためです。

暴利行為の例をいくつか挙げますと、①経済的に困窮している者に対して著しく高利で金銭を貸し付けることです。但し、金銭の貸付に関しては利息制限法、出資法の規制もあります。

また②契約を履行できなかった場合に相手方の損害額(実額)にかかわらず支払うべきと予め定められた金銭を「違約金」あるいは「賠償額の予定」と言いますが、その違約金や賠償額の予定が相手方に生じた損害の実額に比べて著しく過大な場合も暴利行為となります。

さらに③不相当に高価な物による代物弁済予約(質流れ契約)も暴利行為になります。例えば100万円を貸し付けて、その担保として借り主の5000万円の土地を貸し主へ所有権移転させて、もし期限までに100万円を返済しなかった場合は、そのまま5000万円の土地を取り上げてしまうような契約です。

3(不法原因給付)
設例ですが、2で述べた通りAが困っていることを利用して、不当に大きな利益を得る契約は「暴利行為」に該当し(民法90条)、法律上無効になります。

契約が無効になると、本来は相手方へ既に支払った100万円は「法律上の原因」が存在しないことになり、返してもらえるのが原則ですが(民法703条)、設例のような「不法な原因のために給付をした者」は、その給付したものの返還を請求することができません(民法708条)。したがって、Aに貸した100万円は戻ってきません。

4(出資法、利息制限法)
さらに出資法は、貸金業者が年20%を超える金利を得る契約を締結した場合、5年以下の懲役等刑罰を科せられます(出資法5条2項)。

貸金業者ではなくても、年109.5%を超える金利を得る契約を締結した場合、5年以下の懲役等刑罰を科せられます(出資法5条1項)。

設例は月1割=年120%の金利を得る契約ですから、出資法にも違反して、刑罰の対象となります。
また刑罰は科せられませんが、次の場合を超える金利を得る契約は、超過部分について無効です(利息制限法1条)。

元本が10万円未満の場合         年20%
元本が10万円以上100万円未満の場合  年18%
元本が100万円以上の場合        年15%

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